衝撃の同席調停   大阪研究会   同席合意形成と法律業務   ニューヨークのMediation
 
LANCIA   FORREST   おまけ

同席での「対話」による問題解決   弁護士大澤恒夫 

 私は従前から小島武司・中央大学教授のご指導を頂き法的交渉などの勉強をさせていただいてきましたが、その延長線上で1997年から「同席コミュニケーションによる合意形成と法律業務」のテーマで研究を始めました。このテーマに漕ぎ出してみて、無限の大海原で思わず溺れてしまうほどの底知れなさを感じながら、勉強しています。日々の実務の喧騒なかで押しつぶされそうになりながら・・・

・・・などと言っているうちに、5年もの歳月が流れてしまいました。まさに「少年老い易く、学成り難し」です
・・・広げた風呂敷はいまやもっと大風呂敷になってしまっており、「弁護士業務における対話の理念と技法〜法と対話の専門家としての法律家をめざして」なんていう、口幅ったいものになってしましました^_^; が、学位論文を提出することができました。はたしてその内容はどのようなものになるか、・・・開けてびっくり玉手箱、だったりして^_^; 
・・・そして、この論文に訂正加筆をして、信山社より『法的対話論』を刊行していただくことができました(2004年秋)。
・・・で、その目次を紹介させていただきます。⇒『法的対話論――「法と対話の専門家」をめざして』

 『法的対話論』のサワリ^_^;をちょっとご紹介しますと・・・

・・・・社会のあらゆる場面で「対話」が重要であることが説かれている。しかし、なぜ「対話」が大切なのか、そもそも「対話」とはどのようなことをいうのか、ということについては、必ずしもはっきりしない。法律実務家が紛争の予防や解決に取り組む場合にも、話し合いが重要であることは漠然とは分かるし、実際、仕事の相当大きな部分を話し合いに費やしていることが多いであろう。しかし、なぜ話し合いをしなくてはならないのか、どのように話し合いをすべきなのか、ということは自明ではない。本書はこのような素朴な疑問を出発点としている。
  
「対話」は、個人の相互的尊重という憲法上の要請のもとで行われる相互的な話し合いであり、紛争の予防と解決の場において、自律性と正当性とが交錯する豊かな納得の世界を広げるプロセスである。このような納得の世界を紡ぎ出す「対話」は、人々の自由を支える私的自治の原則を実際の生活世界で現実のものとしてゆく実践である。自律的な生を営む個々人は、紛争に直面した場合も、他者から裁断され命じられるのではなく、当事者間で「対話」を通じて相互に納得の行く解決を自分たちの手で生み出してゆくことができるのである。
  
本書では、そのような根源的な価値を有する対話の在り方を、法の諸分野だけでなく臨床心理学、インフォームドコンセント、ゲーム理論、交渉理論などの関連分野の成果にも教えを乞いつつ、相談、交渉、調停、仲裁、訴訟という諸場面を縦断しながら検討し、紛争に直面する人々をサポートする弁護士の姿として、単なる法律の専門家ではなく、「正義の総合システム」における「法と対話の専門家」としての像を提示する。・・・・


2008年3月1日:小島武司監修『民事弁護の基礎―訴え提起までにすべきこと』(レクシスネクシス)が出版されました。
私は第7章「民事実務の源流と躍動―相談・交渉・ADRを中心に」を執筆しました。
第1章 相 談(須藤正彦・仁木恒夫)
第2章 事実調査と情報・資料の収集(飯島澄雄・澤田繁夫)
第3章 受任後訴提起等までの間の処置―示談交渉(須藤正彦・仁木恒夫)
第4章 法的手段の選択(須藤正彦・仁木恒夫)
第5章 証拠保全と訴え提起前の証拠収集(飯島澄雄・澤田繁夫)
第6章 民事保全(飯島澄雄・澤田繁夫)
第7章 民事実務の源流と躍動―相談・交渉・ADRを中心に(大澤恒夫)

2008年1月23日:静岡大学人文学部法学科の宮下修一准教授のゼミで、「交渉を考える―皆さんの交渉体験に基づいて」をテーマにして、ワークショップを行いました。40名近くの方が参加してくださり、午後の半日をとても楽しく有意義に過ごすことができました。
 次のような手順で計画して、宮下先生のご指導のもと、実施していただきました。
@ テーマ:「交渉について考える―皆さんの交渉体験に基づいて」
A 方 法: a) 参加者全員が各自のこれまでの生活の中で体験した交渉について、A4用紙1枚程度にまとめる。ただし、人に話して差し支えのない範囲に限るものとする。題材は問わない(アパートの賃借交渉、合宿先旅館の値段交渉、友人との揉め事をめぐる交渉。揉め事を間に入って解決した活動。バイト先での交渉。その他何でもOK)。成功した話だけでなく、失敗した話も重要。
     b)  書いたものは、予め大澤のほうに提出していただく。
     c)  次に、5〜6人で1班を作っていただき、プレ自主ゼミを行っていただく。そこで予め、全員の書いたものを相互に読み合って、全員の交渉体験について、質疑応答、感想など出し合い、議論をし、議事をまとめ、大澤に提出する。
  d)  プレゼミでの議論を経て、各班ごとに代表作1作を選出する。ここでも成功したか否かではなく、多様な問題関心から光を当てて、全員の議論を通じて選出してほしい。
  e)  各班毎に代表作とそれを巡る議論を授業でプレゼンするための資料をパワーポイントで作成し、大澤に提出する。
(ここまでを授業の1週間前までにお願いしたい)。
  f)  授業では、みなさんの交渉体験とプレゼミでの議論を各班毎にプレゼンしてもらい、交渉をめぐる諸課題について議論し、全員での共有を図る。

2008年2月23日:東アジア地域連携フォーラム(FEAL)がJICA大阪で開催され、中国、韓国、日本の研究者、実務家および学生が参加し、「法律家の新しい社会的役割」をめぐって、各国からの報告と討論が行われました。第1主題:「立法・政治過程における法律家の役割」、第2主題:「ADRと交渉における法律家の役割」、第3主題「社内弁護士の役割」の3つのセッションが行われ、私は第2主題で大阪大学の福井康太先生の司会をいただき、「ADR法後の法律家の職域」というテーマで報告をさせていただきました。福井先生のBlog「法理論を語る」をご参照ください。

2008年2月16日:神奈川民事調停協会連合会研修会で「調停と対話」と題してお話をさせていただきました。180人近くの民事調停委員の方々が参加してくださり、さまざまな角度から報告と討論が行われ、とても勉強になりました。

2008年2月11日:第三回大阪大学・上智大学特色GPシンポジウム「大学対抗交渉コンペティションと交渉教育」が行われ、第3部「教員・審査員参考演技と審査員・教員の視点」で、模擬仲裁の代理人役を務め、ディスカッションをさせていただきました^_^;。大阪大学・福井康太先生のBlog『法理論を語る』をご参照ください。

2008年2月8日:日弁連業務改革委員会21世紀弁護士像研究プロジェクトチーム『弁護士改革―これからの弁護士と事務所経営(ぎょうせい、全弁協叢書)が発刊されました。さまざまな観点から、弁護士の現状と近未来について光を当てて検討しており、弁護士のみならず、司法修習生や法科大学院で学ぶ学生の方々にとっても有益な情報を提供するものと思います。私もプロジェクトチームの一員としてかかわってきました(^^)。

2008年2月2日:日弁連法科大学院センターロイヤリング研究会が中央大学法科大学院で行われ参加してきました。


2007年12月8日:司法アクセス学会の第1回学術大会が弁護士会館クレオで行われました。
1 講演 ダニエルH・フット(東京大学教授)「外から見た日本法制の改革 司法へのアクセスは本当に向上するか」
      村山 眞維(明治大学教授)「法律問題と司法へのアクセス」
2 シンポジウム  テーマ 『法テラスの挑戦―1年間の実践の検証から』
  ・ 基調報告  寺井 一弘(日本司法支援センター常務理事)
  ・ パネル・ディスカッション
    寺井 一弘(日本司法支援センター常務理事)
    我妻  学(首都大学東京教授) 早野木の美(かながわ中央消費生活センター消費生活専門相談員・関東学院大学非常勤講師)
    池永 知樹(弁護士)  
    コーディネーター 池田 辰夫(大阪大学教授・弁護士)

2007年12月1日〜2日:第6回大学間交渉コンペティション(後援・住友グループ広報委員会、日本仲裁人協会、ホワイトアンドケース法律事務所)が上智大学で行われ、私は審査員として参加しました。東京大学、京都大学、大阪大学、九州大学、北海道大学、名古屋大学、中央大学、同志社大学、早稲田大学、慶応義塾大学、上智大学、一橋大学、東北大学、学習院大学、立命館大学、チーム・オーストラリア(Austrarian National University,The University of Sydney,The University of New South Wales)の16大学から251名、審査員(内外の研究者、企業法務担当者、裁判官、弁護士など)も90名以上が参加し、初日は国際取引紛争について模擬仲裁を、2日目は関連案件に関するビジネス模擬交渉を、行いました。審査の結果、今年も昨年に引き続き、チーム・オーストラリアが優勝しました。

2007年11月17日:法とコンピュータ学会学術大会が学習院大学で行われました。中心テーマは「IT社会における労働問題」で、情報産業における偽装請負、長時間労働、退職後の競業避止義務など、様々な問題について貴重な報告と有益な議論がなされました。

2007年10月27日:大阪大学大学院国際公共政策研究科(野村美明教授)主催により、茂木立仁弁護士を講師として、「プロスポーツ等代理人交渉について」と題するセミナーが行われ、私は司会と討論のファシリテータを務めさせていただきました。プロ野球選手の代理人として厳しい交渉に取り組んでこられた茂木立弁護士が自身の経験を踏まえて、対等な契約締結(更改)交渉とはどのような交渉であろうか、日本のプロ野球選手の契約更改交渉は、対等な契約交渉といえるのか、現実にその交渉の席についた者として、対等な交渉であったのか、対等な交渉はあり得るのか、制度として問題はないのか等、その他の交渉の経験と比較も交えながら、熱く語ってくださいました。

2007年9月29日、10月6日、10月13日:桐蔭横浜大学ミディエイション交渉研究所、調停者養成研修講座が行われました。私は10月13日の最終日を担当しました。

2007年9月:法律文化社から小島武司先生ほか編著『テキストブック現代の法曹倫理』が刊行されました。私は、第1章(小島先生と共著)、第12章を執筆させていただきました。
第1章 正義へのアクセスと法曹の役割―法曹倫理の基本的意義(小島=大澤筆)
第2章 法使用における職業倫理と市民倫理 第3章 依頼者と弁護士 第4章 守 秘 義 務
第5章 利 益 相 反 第6章 共同化およびMDPと倫理 第7章 民事訴訟と倫理 第8章 法律相談・交渉・民事保全・民事執行と倫理 第9章 企業法務と倫理 第10章 弁護士の公益活動―日本司法支援センター・ 法律扶助,弁護士過疎 第11章 弁護士広告と倫理 第12章 弁護士報酬と倫理(大澤筆) 第13章 刑事弁護人の役割と倫理 第14章 検察官の役割と倫理 
第15章 裁判官の役割と倫理

2007年8月18日:大阪大学大学院国際公共政策研究科(野村美明教授)主催により、特色GP公開講座「対話による交渉」と題して、3つのセッションを行いました。第1部・講義編:「『対話による交渉』へのリフレクション―厳しい感情的対立の振返りを通じて―」と題して、私自身が取り組み厳しい感情的対立を経た交渉の実例の振り返りを通じて、「交渉」とはどのようなことか、フィシャーらの『Beyond Reason』(新ハーバード流交渉術)の提起する感情の問題などを検討しました。次に、第2部・実演編として、大学サークル幹事が合宿先の民宿と行う交渉の事例を学生のみなさんに実演していただき、実際の交渉のなかにどのようなファクターが働いているのか、反省点はなにか、どのようにすべきなのか考えていただくきっかけをつかんでいただきました。そして第3部・対話編として、第2部の実演の振り返りをしながら、受講者の方々との対話を通じて、交渉の在り方について更に議論を深めてゆきました。

2007年7月21日:桐蔭横浜大学ミディエイション交渉研究所の設立記念シンポジウムが同校メモリアルアカメディウムで行われました。

2007年7月14日:仲裁ADR法学会学術大会が立教大学で行われました。道垣内正人会員の 「日本スポーツ仲裁機構における仲裁・調停」高橋裕会員の 「Look From Both Sides Now:同席調停と交互面接調停をめぐって」の個別報告と熱心な討論がなされ、また、「消費者紛争ADRの現状と展望」のテーマでミニ・シンポジウムが行われました(コーディネータ山本豊会員、 沢田登志子会員、松本恒雄会員、山田文会員)。

2007年4月30日:大阪大学大学院国際公共政策研究科・交渉教育支援センター(野村美明教授)主催による公開講義 「人を動かす−交渉と音楽」With ミニ・コンサート&TEA が行われました。「 交渉は思いを人に伝えて動かす技術(art)である。人を動かすパーフォーマンスとして音楽と似ている。理論とテクニックに秀でているだけでは人は動かせない。われわれは、よい交渉者になるために、よい音楽家からなにを学べるだろうか。」という野村教授の問題意識を出発点として、法律家としては野村教授と私(大澤)、音楽家として南部靖佳氏(フルート)及び天野永里加氏(ピアノ)が参加し、橋本佳苗氏(ドリームランチャー)の司会により、対話と音楽会を楽しみました。この公開講座の模様は、JCAジャーナル2007年10月号及び11月号に掲載されました。

2007年2月22日:本日午後2時から、大阪大学・上智大学特色GPシンポジウム「大学対抗交渉コンペティションと交渉教育」が東京・田町のキャンパス・イノベーションセンター1階 国際会議室で開催され、参加しました。交渉コンペティションをより良いものとするため、参加した学生(外国からの学生を含め)からの積極的な意見の提示や運営委員の先生がたによる応答、同志社大(岡田先生)、学習院大(草野先生)、上智大(森下先生)による各大学での交渉教育の取組みの紹介、学生を主体とした質疑応答などが、熱く展開されました。学生や教員の多様な考え方を提示し合い、すり合わせることによって、より良い交渉教育が実現していくだろうと思います。野村先生(大阪大教授)がコメントしておられたように、学生諸君の実に良く考えた意見を聴いていると、日本、いや世界の将来に一筋の光明を見る思いでした。

2007年2月11日:交渉教育研究会で、昨年模擬交渉のロールプレイの続きとして、同じ事案が民間調停に持ち込まれたという想定で、調停のロールプレイを行って、議論をしました。私は申立を受けて調停人を困らせる中年男性の役(ぴったりですね)を演じました^_^; 当日の研究会については、福井康太先生のBlog「法理論を語る」をご覧下さい。

200723日:静岡県司法書士会志太榛原支部の研修会を担当しました。相談のあり方をめぐって、対話の理念や技法などを交えて、参加者とディスカッションをさせていただき、貴重なご意見をいただきました。


2006年12月19日:小島武司先生(中央大学名誉教授)の最終講義が中央大学多摩キャンパス8204号室で行われました。テーマは「民事訴訟法の法理と改革の半世紀」です。貴重なエピソードを交えながら、理論と制度改革、実務の変革に取り組まれた50年余りの歴史と今後の展望を講じられました。ありがとうございました。長い間お疲れ様でした。そして、これからも末永くご指導くださるようお願い致します。

2006年12月2日、3日:第5回大学対抗交渉コンペティション(住友グループ広報委員会、日本仲裁人協会、ホワイト&ケース法律事務所後援)が12月2日(土)、3日(日)の二日間にわたり上智大学で行われました。今年は15校(チーム・オーストラリアを含む)、223名の学生と、内外の研究者・教員、裁判官、弁護士、企業法務担当者など多数の審査員が参加しました。私も審査員として参加しました(今年で3回目の参加になります)。携帯情報端末の国際的JV事業をめぐる紛争に関する模擬仲裁(第1日目)と同事業に関連する模擬契約交渉(第2日目)が展開され、今年はチーム・オーストラリアが優勝しました(入賞校:準優勝=京都大学、第3位=同志社大学、第4位=上智大学、第5位=名古屋大学)。運営委員長の野村美明教授(大阪大学大学院)が述べられるように、このコンペティションを通じて国内外で交渉を担う若い人材が育つことを大いに期待したいと思います。

2006年11月19日:@法律時報2006年11月号「法と対話の現状と課題」という特集があり、私も応答的社会における、対話の支援としての弁護士業務というテーマで書かせていただきました。応答的社会への転換と司法制度改革、人と社会の可謬性と対話、紛争に直面した人々に対する人間的理解、納得へのプロセスと弁護士の役割(自律性と正当性の交錯する世界への支援)、「正義の総合システム」における法と対話といった事柄について検討しています。 A11月13日に国土交通省国土交通政策研究所主催の「社会資本整備における紛争解決手法〜合意形成円滑化のためのメディエーション〜」行われ、パネリストとして参加しました。

2006年7月8日:京都大学で仲裁ADR法学会が開催され、私は福井康太・大阪大学法科大学院助教授のご報告「ADR機能とその射程―紛争の解決から予防・管理へ」の司会をさせていただきました。「紛争との共存を可能にするインフラ」としての「ADR観」、「交渉メディアとしての法」といった斬新なアプローチにより、総合法律支援制度ともあいまってADRが多様なニーズへの対応を果たしてゆくための展望を示されました。福井先生は近著「紛争の総合的マネジメントと私的自治−職場トラブルへの総合的対応を手がかりとして−」(阪大法学56巻2号35−92頁)において、さらに具体的かつ突っ込んだ検討をしておられます。この論文はNet上でダウンロードできます。


2005年10月22日:10月6日に東京司法書士会のADR研修会「法と対話」と題して話をさせていただく機会を得ました。参加者のご協力も頂いていくつかの実演(相談の例を2つ、Mediationの事例を3つ)も行い、相談やMediationの在りかたを一緒に考えました。


2005年8月10日:更新が遅れてしまい、アッという間に8月も上旬を終える時期になってしまいました。7月下旬から8月上旬にかけて対話をめぐる活動を振り返ってみますと・・・・◆7月16日に全国青年司法書士協議会代表者会議「紛争におけるADRの位置付けと多様性」と題した話をさせていただきました。また◆7月24日に京都大学の山田助教授の企画になるフォレスト・モステン弁護士(米国)によるMediationのトレーニング講座(1日)に参加させた頂き、27日夕刻にはモステン先生を囲んだ研究会が京都大学で開催され、参加してきました。◆8月8日、境界問題相談センターおおさかのADR研修会で若干のロールプレイなどを交えながら、「相談・ADRと対話」というテーマで話をさせていただきました。◆「法律扶助だより」vol.89(2005年7月28日号)「司法アクセスの支援と対話」というエッセイを掲載して頂きました。


2005年6月19日:昨日、野村美明先生(大阪大学大学院際公共政策研究科教授が中心となられる特色GP公開講座の一環で、拙い報告をさせていただきました。「法律家と交渉技術」というテーマを与えられていたのですが、技術のお話はほとんどできませんでした^_^; ま、私自身に「技術」があるわけではありませんので、当たり前なのですが^_^;・・・私の報告のエッセンスは、福井康太先生(大阪大学法科大学院助教授)がさっそくBlogで紹介してくださいましたので、それを参照していただければ幸いです(福井先生、ありがとうございます<(_ _)>)。


2005年5月2日:先月、商事法務から太田・野村編著『交渉ケースブック』が出ました。私も末席で一部(第4章「紛争解決のシステムと交渉」の「訴訟と交渉」)を執筆させていただきました。「法科大学院テキスト。契約交渉、紛争解決交渉など法交渉の学習・実践のための教材。研究者、弁護士、裁判官、外交官、企業実務家など経験豊富な専門家が、交渉の重要な概念を易しく説明するとともに、必読の参考文献を示す。」と謳われています。


2005年3月20日: 
 ● 今年は2月と3月に「法的対話」についていろいろな研究会、研修会、シンポジウムなどで話をさせていただく貴重な機会を得ましたので、まとめて^_^;報告します。
 @ 静岡大学で法学だけではなく哲学、心理学など幅広い学際的な協同により臨床と法の問題を考究する研究会が行われており、2月22日にその研究会で報告をさせていただきました。私の問題関心も法学の諸分野だけでなく、臨床哲学、臨床心理学など臨床の諸分野における実践や研究の成果から学びたいということにありますので、とても楽しい勉強の機会を与えていただき感謝をしております。なお、静岡では大学の先生方や企業の法務担当の方々、不動産鑑定士、弁護士などが集まって「静岡民事法研究会」という研究会を行っていますが、昨年11月18日に法的対話について報告をさせていただきました(これをUPするのを忘れてました^_^;)。
 A 2月27日日曜には、静岡県青年司法書士協議会でもわたしの「法的対話」を取り上げてくださり、報告をさせていただく機会を得ました。正義へのアクセスの保障という共通の理念に導かれ社会的な貢献を目指している司法書士の皆さんと対話をめぐる課題をディスカッションさせていただく貴重な機会を与えていただきました。全国青年司法書士協議会の会長になられる小澤さんをはじめ、みなさまから励まされ、さらに勉強をしてゆきたいと思いました。
 B 3月7日月曜には、大阪弁護士会でADR研修会が開かれ、法的対話について報告をさせていただきました。大阪弁護士会民事紛争紛争センターの弁護士さんや境界紛争の解決を目指すADRを担っている土地家屋調査士の方々が参加されました。土地家屋調査士の皆さんから具体的な事例でのご報告もいただき、境界紛争で悩んでいる人々との対話をとても重要に考えて実践され、成果を挙げていることが分かり、私自身とても勉強になりました。
 C 3月18日金曜に早稲田大学法科大学院の形成支援プログラムによる「法科大学院と継続教育プログラムの可能性」というシンポジウムが行われ  http://www.waseda.jp/law-school/topics/20050304.html、私は「法理論継続教育への期待 ―「法的対話」をめぐる理論と実務の研究を例に― と題して報告をさせていただきました。私自身の実務体験のなかから、「なぜ対話をしなくてはならないのか、どのように対話をするのか、そもそも対話とは何なのか」といったプリミティブながら根源的な疑問に直面した経過を申し上げ、法哲学、憲法学、法社会学、法システム論などの法学の諸分野、さらには臨床哲学、臨床心理学b、交渉理論、ゲーム理論などを含めた理論的な検討により、私なりに上記の疑問への取り組みをしたことについて報告しました。そして、利害や感情が激しく渦巻く個別的な事案にどっぷり浸かる実務家と普遍の世界を考究する理論家とが共に協力をすることによって、個別の世界と普遍の世界を洗練でき、その相互交流によって人々の役に立つ実践と理論を生み出してゆけるのではないか、といったことを申し上げました。ADR-JAPANにおける和田仁孝教授によるコラムhttp://www.adr.gr.jp/columns/index.htmlもご参照下さい。
 ● それから、3月19日、20日(土日)、関西学院大学法科大学院の主催で「正義は教えられるか?」という、とても刺激的で興味深いシンポジウムが行われました。http://192.218.160.219/keiseisympo1.pdf 私はスケジュールの都合で初日の講演しか拝聴できなかったのですが、題名どおりとても有意義なシンポジウムだったと思います。W.Damon教授(スタンフォード大学)の「Good Work」論は、現代の複雑で困難な状況下で問題に取り組みまなければならない専門職が「よい仕事」をなしうるためには、専門職の育成において、学生が専門職の使命を理解し自分自身の中に内面化し、実務に就いた後も考え続ける素地を形成する必要があり、そのためには倫理あるいは正義(これは特定のイデオロギーや価値観ではなく、正直さや誠実、思いやりなどといったuniversal moral standard)や社会的な役割について教育することが、極めて大きな重要性を有するということを指摘するもので、とても勉強になりました。「正義の総合システム」における「法と対話の専門家」という法律家像を模索している私の方向性が、諸外国で考えられていることからしても大きく間違ってはいないことが分かり、意を強くしました(^^)。


2004年11月20日(土曜)、21日(日曜)の二日間にわたって上智大学で第3回「インターカレッジ・ネゴシエーション・コンペティション」(住友グループ、日本仲裁人協会、後援)が行われました。全国の国公立・私立大学の学生が参加し、日本語又は英語で模擬交渉を実践します。この競技会は、交渉の理念や技術を学ぶ実践的な機会を提供し、将来日本や国際社会の構築、運営に貢献する人材の育成をめざしています(詳しくはhttp://www2.osipp.osaka-u.ac.jp/~nomura/project/inter/index.htmlを参照してください。)。この競技会では、現実のビジネスや紛争の場で困難な交渉の経験を重ねてきた内外の実務家(企業法務担当者、裁判官、弁護士など)や交渉の研究・教育に携わってきた内外の研究者が審査員を務めます。今年は北海道から九州まで12校、32チーム(学生約160名)が参加し、審査員も約40人ほどが集合しました(私も未熟ながら審査員の末席を汚しました)。今年は、自動車メーカーと部品メーカーとの国際取引をめぐる紛争についての模擬仲裁とジョイントベンチャーの設立を目指す契約をめぐる模擬交渉が行われました。審査の結果、3年連続で東京大学の優勝で幕を閉じました。


2004年11月6日:Updateが遅くなってしまいましたが、月報『司法書士』2004年7月号の拙稿「交渉と対話ー対話による交渉」がWeb上で読んでいただくことができます。それから、一番上に書きました私が中央大学に提出した学位論文に若干の訂正加筆をした『法的対話論――「法と対話の専門家」をめざして』(信山社)が刊行されました^_^;


2004年6月16日:NPO日本メディエーションセンター(JMC)として金融財政事情の雑誌『登記情報』に連載をしている『ADRへの挑戦』で私が担当した「わたしたちは、なぜ話し合いを求めるのでしょうか」(同誌連載第2回、2004年5月号)をUPします。


2004年2月29日:「司法制度改革と先端テクノロジィ研究会」(私も末席を汚しています^_^;)の「司法制度改革と先端テクノロジィの導入・活用に関する提言」が公表されました。同研究会のHPからも入手していただくことができます。なお、2003年12月14日に開催された第1回シンポジウム「正義へのユビキタス・アクセスーその創造的展開」の成果報告(報告者の映像もご覧いただけます)も同研究会のHPで公開されております。
 また、法律時報76巻3号(2004年3月号)特集「情報技術と司法制度改革ー正義へのユビキタス・アクセスとIT革命」の1節として、同研究会の藤本氏と共著で「司法ネットとITー法へのアクセスA」という論文を書かせていただきました。併せてご参照頂けましたら、幸いです。この特集の内容は以下のとおりです。

特集の趣旨――改革の方向性と「電子的」処方箋 指宿 信
鼎談 e-Judiciaryへの里程標 指宿 信・早野貴文・今田高俊
思想的理念的基盤をめぐって――法へのアクセス(1) 小島武司
司法ネットとIT――法へのアクセス(2) 大澤恒夫・藤本光太郎
e-ジュディシアリィ構想――法のフォーラム(1) 須崎雅彦
コート・テクノロジー――法のフォーラム(2) 笠原毅彦
裁判所記録管理の電子化と訴訟記録公開のガイドライン
 ――法のフォーラム(3)
合田俊文
ロイヤー・テクノロジー――開示・可視化・迅速化 川嶋四郎・鈴木善和
法教育、市民参加とテクノロジー 江口勇治・大河原眞美
法曹養成の新段階――法科大学院を巡る課題 由岐和広

2004年1月11日(日曜日):第2回対話シンポジウムが大阪大学吹田キャンパスで行われました。昨年の第1回に引き続く大阪大学の21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」プロジェクト及び文部科学省科学技術振興調整費・科学技術政策提言「臨床コミュニケーションのモデル開発と実践」研究班の主催によるもので、今回のテーマは「臨床の現場での具体的な取り組みから、対話モデルを考える」というものでした。
 ● 午前中は、@VOM(被害者加害者調停)の取り組み、AMedicalCommunication(医療における対話)、B地域からのADRの発信、C経済産業省・経済産業研究所「ADRを担う人材育成に関する研究会」の取り組み、の4つのWorkShopが行われました。JMCメンバーはBCで発表を行いました。
 ● 午後は、主催者を代表した鷲田教授のお話に続いて、@棚瀬孝雄・京都大学教授による基調講演「対論と対話」、A辻本好子・NPO法人ささえあい医療人権センターCOML代表による基調講演「医療現場における対話の必要性」が行われ、最後にB本日の全般を振り返る全体シンポジウムが行われました。一日ではもったいない、盛りだくさんの内容で、わたくしなりに消化をして勉強を続けてゆきたいと思います。

VOM研究会による対話RolePlay

ADR人材育成の発表

地域ADR発信

ある民間ADRの施設

全体シンポジウム


2004年1月10日(土曜日):NPO法人・日本メディエーションセンター(JMC)の設立記念集会が四ツ谷で行われました。社会の幅広い方々が参加し、同センターへの思いを語ってくださり、引き続いて池住義憲さん(国際民集保健協議会[IPHC]日本連絡事務所代表、南山大学講師)によるワークショップが開かれ、「対話」の促進者をめざすMediatorないしFacilitatorが心の中で常に持ち続けなくてはならない根本的な精神を「参加型学習」で学ぶ機会を得ました。参加型学習については、池住義憲「参加型学習とは何か―より意味のあるファシリテーターとなるために」(医学書院・助産雑誌Vol.58No.1,2004年1月)をぜひ参照してください。


参加者からお祝辞を頂く


参加型学習の実践


素晴らしいファシリテーション


ヒナ鳥にフィードする親ツバメ


2004年を迎えました・・・で、年末年始休みなしで昨年からの宿題にかかっていて・・・4日の夜は久しぶりの完全徹夜で、やっと5日昼ごろに終えました。っていうか、もうウジウジ 考えていてもしょうがないから筆を置きました。そう、上で言いました論文「弁護士業務における『対話』の理念と技法〜『法と対話の専門家』をめざして」(ちょっと題に手を入れました)です。なんとか5日には発送しました。252ページでした。要約作成、印刷、ファイル綴じなどの作業も思った以上に大変 で、疲れたっス^_^; 自分の執務室がぎちゃぐちゃで手が付けられないため、昨年から ずっと会議室兼図書室にこもって作業してましたが、こっちも、もうグチャグチャです。 5日の午後、少しウトウトしたかと思ったら、泥のように眠っていたらしく、年始に見え た方々に失礼をしてしまいました。証拠写真と論文の目次をUPします。


2003年12月14日:「司法制度改革と先端テクノロジィ研究会」主催の第1回シンポジウム「正義へのユビキタス・アクセス〜その創造的展開」が開催され、自律的な社会の構築と運営をIT技術を使って支援するというアプローチで、各方面から貴重な問題提起や提案がなされ、大成功のうちに次の展開への第一歩が標されました。「司法改革」というと従来は法曹会主導の上から下される感じの集まりのイメージがありましたが、このシンポジウムでは、市民を代表される方や自治体首長、民間の方々、米国の州最高裁判事など多種多様な人々が集い、忌憚のない問題提起と提言がなされました。会場では、ITによるビジュアルなプレゼンはもとより、インターネットを通じた遠隔法廷の実演や、内外からの会場へのチャット参加なども行われ、ITが人々のコミュニケーションの充実を促進し、自律的な社会の構築と運営に大いに役立てられてゆくことが予感されました。このシンポの模様はリアルタイムでインターネット・ライブ配信されましたが、VideoOnDemand(VOD)によるストリーミング配信も行われるかと思います。同研究会のホームページ(http://www.legaltech.jp/)をぜひご覧ください。


2003年12月13日:広島司法書士会(広島支部)のお招きをいただき、「対話による法律業務」というテーマで、司法書士の皆さんと一緒に検討をさせていただきました。広島には4百数十名の司法書士がおられ、公私の相談業務に年間延べ人数で千名をはるかに超えるリソースが投入されているということで、一般市民が正義へのアクセスを求めるはじめの窓として、大きな機能を担っているものと考えられます。これからもご一緒によりよい法的なサービスの在り方を考えてゆきたいと思います。広島のみなさん、本当にありがとうございました<(_ _)>


2003年12月1日:日本メディエーション・センターが内閣府より認証され、NPO法人になりました。NPO日本メディエーション・センターのホームページをご参照ください。

2003年11月9日:日本メディエーション・センターの第1回上級コースを修了し、めでたく立派な修了証書を頂きました。


2003年10月15日:NBL771号に、今年5月に行われた日本法社会学会ミニシンポジウム「プロフェッショナルのための交渉教育普及戦略」での報告やディスカッションが掲載されましたので、ご一読いただければ幸いです。なお、各報告者のレジュメや私の追加資料、それから会場での討論の模様は、野村明美大阪大学教授のホームページにUPされていますので、併せてご参照ください。


2003年9月8日:先日申し上げた司法制度改革推進本部の「ADR報告書」について、アメリカ合衆国政府も意見を提出していることが分かりました。次のURLで公開されています。http://usembassy.state.gov/tokyo/wwwhj20030901e1.html
 米国政府の意見でもやはり、ADRの多様性を尊重すべきこと、そのためには弁護士法72条をADRにかぶせてはならないこと、政府がADRの適格性を事前に審査するような制度は採るべきでないこと、また政府が継続的な監視監督をするような制度にはすべきではないこと、などが述べられています。私もこの考え方に賛成です。


2003年9月1日:本年7月に司法制度改革推進本部ADR検討会が出した報告書「総合的なADRの制度基礎の整備について」に対するパブリックコメントの募集があり、9月1日に締め切られました。私も拙いながら意見を提出しました。「多様なADR」の重要な価値自律的紛争解決支援の理念と技法の多様性・創造性とADRADRの公正性・信頼性とADRの法的効果弁護士法72条の問題といった諸点について、言及しました。


2003年6月: 日本比較法研究所のプロジェクトとして行われてきました東京ADR国際ラウンドテーブルの成果の一部が小島武司先生の編集で『ADRの実際と理論1』(中央大学出版部)として出版されました。私は「紛争解決における合意形成の一断面」というテーマで、米国マイクロソフト事件に関して行われたMediationや日本の裁判例の中に現れたソフトウェア紛争などを取り上げて、紛争における合意形成について裁判所やMediatorなどが果たす役割等について検討をしました。


 日本Mediation研究会が2003年3月〜4月に開催した第1回Mediation Skill Training初級中級に参加し、先日立派な修了証を頂きました。これらの講座は第2回以降も継続されており、消費者分野、医療分野、教育分野等々の非常に幅広い人々が参加し、対話を通じた問題克服のあり方について、勉強をしておられます。カリキュラム(第1回講座のもの)をご紹介すると、以下のようになっております。このカリキュラムからもご想像いただけると思いますが、非常に充実した講座になっています。単なる座学ではなくて、Role Playやそれを踏まえたDiscussionなども活発に行われる、とても楽しいトレーニングです。秋には上級講座も開かれる予定ということです。

● Mediation Skill Training 初級

第1講 Mediationの基本と可能性
第2講 交渉・紛争解決のダイナミクス
第3講 聴く技術の基礎的トレーニング
第4講 難しい会話の構造を理解する
第5講 MediationSkillの基礎の基礎
第6講 失敗例(家庭紛争)から学ぶ
第7講 Frequently Asked Question
第8講 会話分析をする
第9講 Introductionを作る
第10講 成功例から技法を学ぶ

いただいた修了証(^.^)

● Mediation Skill Training 中級

第11講 面接・相談の技法とMediation
第12講 異文化コミュニケーション
第13講 交渉・ゲーム理論
第14講 協調的Mediation
第15講 Transformative Mediation1
第16講 紛争解決の社会心理学の最前線
第17講 Coaching、 
第18講Transformative Mediation2


 日弁連の『自由と正義』2003年2月号に「法律業務と対話」というエッセイを掲載していただきました。少しだけ加筆訂正したものをUpします。


2003年5月17日〜18日、日本法社会学会が青山学院大学で開催され、参加してきました。私は今年は「プロフェッショナルのための交渉教育普及戦略」のミニシンポの末席を汚し(^^ゞ、『対話による交渉』の理念と教育というアプローチで、報告と議論をさせていただきました。
 今年も日本法社会学会の学術大会は盛り沢山の内容でしたが、私が参加できたものは、【A】紛争解決制度と市民の法意識・法観念の実態調査に関する個別分科会A(村山眞維・千葉大学教授、濱野亮・立教大学教授、藤本亮・活水大学教授、太田勝造・東京大学教授)、【B】「プロフェッショナルのための交渉教育普及戦略」のミニシンポ(コーディネーター・野村美明・大阪大学教授、報告者=知原信良・大阪大学教授、不肖・わたし(^^ゞ、河村幹夫・多摩大学教授、ローバート・F・グロンディンNY弁護士)、【C】全体シンポジウム「法の声T:法と情動」(和田仁孝・九州大学教授、鷲田清一・大阪大学教授(臨床哲学)、山田昌弘・東京学芸大学教授(家族社会学)、)、および【D】全体シンポ第三分科会「被害のナラティブと法ー救済と情動」(司会:河合幹雄・桐蔭横浜大学教授、報告=葛野尋之・立命館大学教授、藤岡淳子・大阪大学教授、野口裕二・東京学芸大学教授)でした。激動の世の中にあって法をめぐる考え方も大きな転機を迎えていますが、いずれの報告・討論もこのような転機をどのようにとらえるべきなのか、鋭い視点からとても刺激的なディスカッションがなされていて、私の頭の中はいまグルグル回っています(^^ゞ。私の報告は拙いものですが、
レジュメをUpします。


2003年2月28日(金曜日)、日本司法書士連合会でシンポジウム「紛争解決への対話Part2〜ADRの実践に向けて〜」が行われました。司法書士さんがADRを構築する場合に、どのような特色を出すべきか、というようなアプローチでの議論が行われたため、法律家としての司法書士が法律家として利用者から期待される法的情報や法的判断の提供について、どのように対応すべきかといった問題提起がなされました。私としては、自律的社会の紛争解決の在り方として、当事者を主役とする対話による自律的解決が第一次的に好ましいものと考えられ、紛争解決システムの利用者は種々のシステムでどのような理念と技法で当事者が扱われるのかの十分なガイダンスを受けて、主体的に手続を選択できるようにすることが入り口のところで重要であり、そして第一次的には当事者間の対話の復活と熟成を図るMediationがインフラとして普及し利用されるのが、良いのではないかと思います。ただそのようなMediationの構築は非常に難しいものであり、法律家だからといってなしうるものではなく、否むしろ法律家の方が紛争解決というものに固定観念を持っているという面では、法律家の方が難しいかもしれません。そのようなMediationの構築者として司法書士さんがチャレンジされることは良いことだと思います。既に動きのあるNPO法人によるMediationなどとも競い合って種々の工夫をし、人々の役に立つのが良いのではないかと思います。


2003年2月23日(日曜日)、大阪大学で「第1回対話シンポジウム〜対話を促進する方策と、場の構築のための連携」が行われました。午前の部では「被害者・加害者調停」(VOM)のRoll Playと解説が行われ、これに関する質疑・コメントが活発に交わされました。午後の部では、NPO民間型ADRにおける対話の場の構築、運営の問題科学技術問題における意見の違いを克服する場での対話モデルの構築VOMの可能性と課題消費者問題における相談とMediationの連携紛争処理のケア・モデル社会構成主義によるグループダイナミクスソクラティック・ダイアローグの対話実践といった報告が行われ、活発な議論がなされました。社会のあらゆる場面において、とても多様なアプローチで対話の実践が行われつつあることが分かり、大変な刺激を得ることができました。この模様をUPします。


2003年2月6日:昨日(2月5日)、中央大学市ヶ谷校舎で「第4回東京ADR国際ラウンドテーブルーADR in Korea: it's presence and future」(中央大学・日本比較法研究所共同基金プロジェクト)が開催され、参加してきました。韓国・東國大学法科大学の5名の教授が大変興味深い報告をされ(李英俊教授「韓国仲裁法と仲裁合意」金祥洙助教授「民事紛争とADR」李商永教授「韓国の個人信用回復支援制度の特色」金爽謙教授「憲法上の司法保障請求権とADR」延基栄教授「労使紛争の解決とADR」)、参加者による熱のこもった討論が行われました。
 その中でも私が大変興味深く感じ、質問をさせていただいたのは以下のような点でした。
 ■@ 韓国では1990年になって民事調停制度が導入されたそうですが、その特徴の一つに、調停不調の際に必ず「調停に代わる決定」が出されるようになっており、異議を申し立てれば訴訟に移行できるものの、当事者のほとんどはその決定に異議を申し立てない、それは裁判官が調停委員を兼ねていることから、当事者が裁判官の勧告を事実上拒否できないことによる、また2002年7月の民事訴訟法改正で受訴裁判所による和解勧告決定という制度ができ、調停に代わる決定のような機能が期待されているということです。しかし、報告者も指摘されたとおり、判断者と調停者が同じというのは問題ではないかと思います。UNCITRALモデル規定でも調停後仲裁に移行する際には、調停担当者は仲裁人になることはできないとされています。この問題は、日本でも付調停に回されて実施された調停でのやり取りの内容が受訴裁判所に引き継がれて判決手続に利用されるという運用や、家庭裁判所に人事訴訟事件の管轄権も付与して、調停から訴訟への移行を連続的に行うことにするという制度改正問題と、同様のネッコのある問題ではないかと思います。 
 ■A ADRを憲法体系の中でどのように位置付けるかという基本問題について、一つの考え方(A)は、法治国家原理を採用する憲法のものとで、迅速で実効的な権利保護を提供することが要請され、そのための制度としてADRがあるという考え方と、(B)憲法が保障する個人の尊厳「私的自治の原則」を要請し、その紛争解決制度の現れとしてADRが存在するという考え方が示されました。(A)の考え方では、「権利保護」がADRの制度目的となり、ADRで議論(審理)の対象となるのは「権利の有無」という裁判手続と同種の対象ということになる(そうすると、手続のコンセプトも、過去の事実の認定とそれに対する法規範の当てはめという、ミニ裁判的なものになってしまう)のではないでしょうか。そうするとADRは同じ権利の有無を審理対象とする裁判を補完するものとの位置付けを与えられることになるのではないでしょうか。しかし、私としては、私的自治の原則のもとで、人々が自律的に合意を形成して紛争を自主的に解決していくプロセスがADRではないかと思います。ADRは裁判の補完的制度というよりは、それ自体内在的に独自の重要な価値(自律的解決という)を有する制度という位置付けをすべきではないでしょうか。これに対しては、私的自治は対等な当事者間の理念としては理解できるが、実際は強者と弱者との力の不均衡があるため、法が介入して当事者間だけの合意に全てを委ねるという訳には行かない、その意味でADRは法に基づくべきものだ、という指摘がありました。また教授陣から、私的自治は憲法が認める法であり、すなわち法そのものであるという示唆も頂きました。ADRを憲法の観点から位置付けを行うことは、今まで必ずしも十分になされてきたわけではないと思います。そして、「合意と法」という古くて新しい問題を、憲法や法の支配の観点から深く掘り下げることは、制度やその運営のあるべき姿を考える場合、とても重要な課題ではないかと思います。


2003年1月31日、中央大学小島会社法務ゼミで模擬Mediationを行いました。24名のゼミ員(2年生及び3年生)には予めレビンさんの『調停者ハンドブック』を読んで来てもらいました。当日は4人ずつの組に分けて、各組ごとにMediator、申立人、相手方、及び観察者の配役を決め、私が用意した事案(旧知の友人同士で事業を始めたが、相互不信に陥って分裂の危機を迎えた事案)の資料(申立人相手方Mediatorごとに違う内容のもの)を頭に入れてもらい、かつ、Mediatorにはレビンさんの運営技法を意識してMediationを行うことを課題としました。予定ではMediation自体は30分程度を考えていたのですが、話し合いが白熱し(^^ゞ、1時間以上に及びました。Mediation後、各組の観察者にMediationの模様や良かった点、気になった点などを報告してもらい、最後に私のほうから日本の調停と本日行った模擬Mediationとの違いについて数点を挙げ、ゼミ員とDiscussionをしました。そのときの私のメモをUpします。


2002年11月27日、大阪商工会議所で日弁連・日本商工会議所・国際商事仲裁協会主催(経済産業省委託事業)により「ADRフォーラム2002−模擬調停ー」が行われ、BtoB商事紛争について調停による紛争解決のあり方を具体的に示す試みとして、非常に有益なものでした(11月22日に東京でも開催されておりましたが、予定が合わず大阪のほうに参加しました。)。昨年は模擬「仲裁」でしたが、今年は「調停」が取り上げられ、対話による紛争解決という観点からとても時宜を得たものだったと思います。シナリオや調停人や当事者、代理人の配役(弁護士や企業の方)も素晴らしく、肩の凝らない雰囲気の中にも緊張感を漂わせ、オーディエンスに伝わるものがあったと思います。特に調停人を演じられた小原正敏弁護士の人柄がそのまま現れた調停運営は、なかなかのものでした。特に当事者の主体性を尊重し、調停人は何らかのお力になりたいが、あくまでもお手伝いなので、当事者自身が紛争解決の主体としてこの機会を生かして欲しいと励ますという姿勢を一貫して取っておられたのは、さすがです。私のなどは口先ではそのような理念を言っても、いざ話し合いになると声を大きくして説得にかかるような未熟さ丸出し状態で、修行が足りないのを痛感します(^^ゞ


2002年11月15日、財団法人ソフトウェア情報センター(Softic)主催の国際シンポジウム「IT時代の紛争解決メカニズムーADRへの期待」が開催され(不肖、わたくしも実行委員を務めさせていただきました(^^ゞ)、日本のほか6カ国から実務家や研究者が参加し、知財やソフトウェア取引紛争などに関するADRについて、多角的な検討が行われました。
 午前は始めに東京地裁知財部・飯村判事の講演があり、知財紛争の裁判所における和解による解決について、訴訟上の和解、仮処分における和解及び知財専門調停を交えて紹介され、適切な争点整理や暫定的心証開示により当事者が和解に至る解決のあり方を示されました。これについては、開示された心証による和解へのインセンティブの働き方によっては、合意の任意性の理念との間で緊張関係があることと、「暫定的」心証開示なのに和解不調後の補充主張立証は原則として許さない訴訟指揮とされるのは、どうしてか、といった辺りについて、判事さんのお話を聴いて見たいと思いました(残念ながら、質問表を提出した時には、お仕事の関係でもう会場にいらっしゃいませんでした(^^ゞ)。続いて、各国の参加者(シンガポール、台湾、韓国、中国、英国、米国)からADR制度の紹介が行われ、討論が行われました。
 午後は富士通の山地克郎・法務知的財産権本部長により「利用者から見たADRへの期待」と題して、米国等で同社が遂行したADRの実例をもとに紹介が行われ、続いて個別的な問題の検討として、知財紛争のADR、ソフトウェア開発取引に関する紛争のADR、電子商取引紛争のOn−Line ADRなどについて報告と議論がなされました。ソフトウェア取引に伴う紛争は比較的多くて、解決に骨が折れることから、東京地裁の専門調停におけるソフトウェア専門家を交えた積極的な解決活動には大変興味がもたれるところです。
 とても盛りだくさんのシンポジウムで、これからその成果を反芻して勉強をしたいと思っています。


2002年7月13日〜14日、第二東京弁護士会仲裁センターの夏季合宿が行われました。私はスケジュールの都合上、13日のセッション(専門家の関与)のみ出席させていただきました。二弁だけでなく全国各地の弁護士、裁判官、研究者等が集まり、活発な議論が行われ、とても有益でした。
 ●二つの事例報告
で、@カウンセラーが助言者として関与した夫婦関係調整の事案(二弁)と、A一級建築士が仲裁人として関与した建築関係事件(名古屋弁護士会)が報告されました。いずれの事案においても(種々の要因があったと思いますが)、別席交互方式が行われたようで、当事者を尊重したアプローチと言う観点で種々の問題点がありうるように思われ、セッションでも活発な議論が交わされました。専門家の関与によって一般には知りえない重要なInformationがもたらされたり、当事者間の対話の復活が促進されたりすることは、非常に好ましいことです。しかし、専門家の関与によって「権力性」が生まれたり、心証を先行させて裁断的説得が行われたりするのは、好ましくないのではないかと思います。なお、Aの事案で、建築士さんの専門的意見は減額説得をする当事者に対してのみ開示されており、もしその情報が対立当事者にも開示されていたらどうなったでしょうか。その事件で成立した和解は当該専門意見からの論理的帰結からは後退する結論であったことから、和解内容の正当性に問題があるのではないかとの議論もありました。これは≪合意と法≫の問題として、十分な検討が必要だと思います。
 ●部会報告ということで、B専門家仲裁人とするのか、助言者とすべきか、あるいは「専門委員」とするのか、という問題が議論されました。また、C即決和解手続を活用して、仲裁センターでの和解に執行力を付与するため、裁判所と仲裁センターの間で連携がなされるようになってきるということでした(この方式は、数年前の合宿で既に新潟の仲裁センターの運用として報告されていました。)。これも細かく検討すると種々問題点があるようです。


2002年6月8日、九州大学で法社会学会の学術大会が開催され、参加してきました(時間の都合で参加は8日のみ)。沢山のテーマで報告とシンポジウムが行われましたが、私は「弁護士活動を問い直す」「ADRをめぐる社会科学諸理論と制度設計」に出席しました。

 ◆「弁護士活動を問い直す」のミニシンポでは、懲戒システム、非弁問題、法廷活動、企業法務といった種々の観点から、明日の弁護士活動の在り方について活発な議論が行われました(藤本教授「弁護士の社会的統制と懲戒システム」、武士俣教授「アメリカにおける非弁問題の位相」、佐藤教授「法廷活動における弁護士の役割」〜反対尋問の暴力性→主尋問のニ巡方式 阿部教授「企業法務における弁護士の果たす役割は変わるのか」)。若干の感想を述べますと、@ 懲戒システムに関しては、米国では州最高裁が弁護士に対する懲戒権を有することが多いようですが、日本では「弁護士会が懲戒権を独占しないと弁護士自治がなくなる。弁護士自治がないと弁護士が権力に屈することになる。」という議論が一般的で、この議論を前提にすると米国では弁護士自治がなく、弁護士は権力に屈している、ということになりそうですが、その辺はどうなのでしょうか? A 米国の非弁問題が報告されましたが、その関連では、米国では紛争解決会社や独立した指摘事務所などがMediationによる紛争解決活動を行っており、そこでは弁護士資格を有しない人々が種々の専門的訓練を積んで活躍していますが、これは米国ではどのように考えられているのでしょうか?(このホームページの「ニューヨークのMediation」でご紹介しましたように、MediationはPractice of Lawに当らないから非弁ではないという考え方があります。その背景として、そのMediationにおいては事実認定や法の適用は行わないというロジックがあるようでもあり、日本の調停が事実認定と法の適用による説得という「法的」なものと一般に感じられているのとは、ちょっと違うようでもあります。なお、最近日本でも弁護士法72条の改正問題として論議されるようになりました。)。シンポでの議論ではMediatorの活動は全く非弁問題にならないという発言もありました。私も、広く開放的に考えるべきだと思っています。B 法廷活動に関しては、反対尋問の暴力性の弊害を克服するため、いわゆる二巡方式で原告も被告も自分側の証人に対する主尋問の繰り返しによって、相手側の立証に対する反撃をすべきだという考え方が示されました。これに対しては、TrialSystemの自殺に繋がるのではないかとの議論がなされました。C 企業法務と弁護士の関連については、「企業の良心」としての法務部という観点からしますと、(単に日常の一般的法律問題の処理という点だけでなく)法務部が経営トップに対して経営の根幹にかかわる問題に関し独立した意見を具申することが重要であり、その構成員が弁護士であることは特有の意味がありうるのではないかと思います。

 ◆「ADRをめぐる社会科学諸理論と制度設計」のミニシンポでは、ADRの制度設計に関して社会工学や心理学といった諸科学からのアプローチ、また環境紛争、消費者紛争、労働紛争といった個別の類型について、報告がなされ、活発な議論が行われました(原科(東京工業大学)「環境紛争をめぐADR」〜社会工学からのアプローチ田中「消費者問題をめぐるADR−当事者主体的解決における合意形成のための制度設計と消費者志向」、毛塚「労働紛争におけるADR」、大渕(東北大文学部)「紛争解決の心理学―ADRのための考察」〜社会心理学からのアプローチ、守屋「紛争処理論からみたADRの機能的統合の可能性―『制度としてのADR』と『過程としてのADR』の接合のために」)。印象に残った点などを数点申しますと、@環境紛争調停と社会工学からのアプローチ:社会工学は社会問題を解決するための政策や計画に関する工学的アプローチであり、当事者の納得を得るプロセスのPlanningを行うということで、一般の人々の感覚では紛争が生じた場合、裁判の方がむしろAlternativeであり、話し合いによる解決の方がMain。それをAssistするのがADR(=Assisted Dispute Resolution)ととらえる。話し合いのためには必須の前提として情報の共有が必要であり、そのために行われるのが環境アセスメントである。これに基づいてJointProblemSolvingを行う。一般的に参加のレベルとしては、単なる情報提供⇒意見聴取⇒形だけの応答⇒意味のある応答⇒パートナーシップと、右に行くにつれて深まってゆくが、紛争解決のためにはよりレベルの深い参加が必要である・・・というような諸点が大変興味深かく思われた。A消費者紛争に関する報告でもっとも印象深かったのは、田中さんが実施した調査で、一般消費者がレビンさんの対話式解決プロセスのロールプレイを経験した後におけるADR選択の基準の中で「直接相手に伝えたいという気持ち」が前面に出てきたということであり、紛争の相手との同席での話し合いも、信頼の置ける第三者がいれば、話しができると感じているということです。「対話」の問題はとても重要だと思います。B心理学のアプローチで印象深かったのは、ADRに対する信頼のベースとして、介入者(=例えば調停者)の「丁寧さ」(←当事者は自分がどう扱われるかに対して不安を持っており、丁寧に接することでこの不安を和らげることができる。)が重要なひとつの要素である点、また手続において「発言機会」が十分用意されることが「当事者感」、「参加感覚」、「コントロール感」[自分がコントロールしている]を満たし、満足度の向上に寄与するのであり、単なる結果に対する損得結果だけでなく、公正な手続であることによって満足は高くなる(プロセスに対する信頼が重要)という点でした。

 田中さんによれば、自主的紛争解決において「対話」が重要であるとの認識があると思われます(私も大賛成です)。ところで、原科教授の論文にある「アメリカの環境紛争調停」で紹介されている「交渉過程」を見ますと、「対話」の構造になっていないのではないかと思われます。当事者の納得を目指した紛争解決プラニンングという観点から、この点を社会工学的にどのように考えることができるでしょうか。また、大渕教授のご報告にあるプロセスの公正感を支えるファクターとして「発言機会」があり、「当事者感」等の概念のご紹介がありましたが、「対話」という観点との関係はどのように考えられますでしょうか。これらを含めてわたくし自身、更に勉強をしたいと思います。


2002年2月22日、夕刻より日本司法書士会連合会の市民公開シンポジウム「紛争解決への対話〜ADRの可能性」が行われ、参加してきました。司法書士の皆さんが「当事者の自律性を尊重した、当事者間の対話の促進による紛争解決支援」というコンセプトで紛争解決プロセスにアプローチしようとされており、まさに私どもの問題関心と同一の方向性にある事を知り、心強く思いました。と同時に、司法書士の皆さんがこのようなコンセプトを弁護士とは違った特色として打ち出すということについては、私としては「弁護士も同様のコンセプトで紛争解決に取り組むことが必要なのではないか。」そして、「弁護士だからとか司法書士だからとかということではなくて、どのようにしたら人々の役に立てるか」という観点から、一緒になって取り組んでゆくべき課題ではないかと思っています。


2001年12月13日、日本比較法研究所のプロジェクトである「東京ADR国際ラウンドテーブル」が行われ、研究者や実務家からICCや米国でのADRの状況、日本知的財産仲裁センターの実情、その他のADRに関する各種の報告が行われ、また中国西南政法大学の研究者から中国の裁判法やADRに関する報告がなされました。日本の大学に留学している中国の人々も多数参加され、熱心な討議がなされました。私は「紛争解決における合意形成過程の一断面」と題して日米の若干の事件例とプラクティスを題材に、合意形成に臨む当事者に対する励ましや、Facilitation,とEvaluation、同席方式と別席方式、プロファッショナルとしてのMediator、Mediationと訴訟との関係などについて検討をしました。


2001年12月1日、NBL726号に紹介記事:大澤「米マイクロソフト社に対する反トラスト法訴訟で和解合意」を掲載しました。控訴審判決で差し戻され、コロンビア地区連邦地裁(Colleen Kollar-Kotelly判事)で審理が行われていましたが、Kollar-Kotelly判事はボストン大学ロー・スクールのEric D. Green教授(司法省及びMS社の両者で推薦)をMediatorに選任し、そのMediationによって和解が成立したものです。Green教授は調停事務所も主宰するADRの専門家です。差し戻し前の原審(Jackson判事)でも判決前にMediationが行われたのですが、和解に至りませんでした。そのときのMediatorはシカゴ大学ロー・スクール講師も務めるRichard A. Posner判事(第7巡回区連邦控訴裁判所)でした。Posner判事には法の経済的分析や反トラスト法などを含め多数の著書論文があります。今回の和解がどのようにして成立したのか、原審でのMediationはなぜ成立しなかったのか、は大変興味深いところです。


2001年11月26日に中央大学・小島会社法務ゼミで模擬Mediationを行いました。ゼミ員全員に事前にレビンさんの「調停者ハンドブック」を予習してもらい、当日、申立人・相手方・Mediatorの配役を決め、直前に各配役用のストーリーを配布し、Mediatorは事案の内容について白紙の状態で臨んでもらうという方法でやってみました。申立人=相手方間の対話を復活させることの難しさを肌で感じることができました。


2001年11月15日、全国消費者大会の分科会の一つとして、「ADRって何?」レビンさんの『話合いによる解決』教室」が行われ、多数の人々が参加し午前10時半から午後4時半まで、パネルディスカッション、レクチャー、スキル・プラクティスと、とても内容の濃い一日でした。レビンさんの講義は、米国の公民権運動以来のADR、特にMediationの歴史的背景と発展過程、ダーウィン以来の紛争観と思想的背景、米国における種々のADR手法の異同などを、とても分かりやすく解説して下さいました。現在ではADRというよりも、紛争予防を含めた“Conflict Management”という考え方が有力になってきているとのことでした。また、スキルプラクティスのセッションでは、感情のクールダウンと相互の異質性の伝達(相互の異質性の伝達というのは便宜上ここで使用したコトバです(^^ゞ)のためのリフレイミングの練習を行いました。コトバというものがいかにセンシティブで難しいものか、プラクティスはいつもながら「言うは易く、行うは難し」を身をもって実感させてくれるものでした。最後に「バーゲンの落とし穴」というレビンさんのオリジナルシナリオによる、ロールプレイが行われました。


2001年6月9日〜10日、日本法社会学会の国際シンポジウム「変化する現代社会における司法の役割」が学習院大学で行われました。米国、欧州(フランス、ドイツ、イギリス)、中国から研究者、実務家が参加し、熱い議論が闘わされました。このシンポジウムを通じ、司法に対しては、case pressure, social pressure,イデオロギー的pressureなど様々な圧力が加わっており、その中で裁判官や当事者の役割に関する考え方、ジェンダーやマイノリティに対するバイアスの克服への期待、法の支配と市場原理との相克、これらを通じて「法」というものを如何に理解するかが大きな課題となってきていることが、理解できました。ただ、現在行われている司法改革論議もそうですが、紛争解決の全体の中で司法外での解決活動が占める大きな役割に照らして、非司法的なるものにも更に光を当てて行く必要があるように思いました。


2001年5月19日〜20日、日本民事訴訟法学会が國學院大学で行なわれました。安逹静岡大学助教授の「米国クラス・アクションによる裁判上の和解・判決の承認について」など、興味深い報告がなされました。石崎・横浜簡裁判事の「小額訴訟運営の概況」で報告された、1件1期日(1時間半)・ラウンドテーブル一体型審理の実践は、当事者間の対話の回復と迅速な解決といった点でとても印象的でした。
 シルケン教授(ドイツ・ボン大学)の「素人及び専門家の裁判手続への参加」では、「素人による調停及び裁判には、非常に懐疑的な立場」を表明しておられました。日本では司法改革論議の中で参審制や陪審制などが非常に盛りあがっていますが、ドイツでは逆な方向での議論も相当に強いようで驚きました。私自身は、「法」をブラックボックスの世界から広く開かれたものにするためには、一般国民の参加が有意義だと思っています。
 シンポジウム「新民事訴訟法における理念と実務」は大変刺激的な議論が展開され,特に紛争解決プロセスにおける当事者と裁判所の役割をめぐる理念の問題は,私の研究テーマとも非常に密接なもので、とても興味深かいものでした。


2000年11月18日、法とコンピュータ学会が慶応大学で開催されました。午後のセッションで シンガポールのSubordinate CourtsのChief Information Officerである Richard Lau氏が“e-Justice2000@Singapore”というSpeechをされました。強力な都市国家とはいえ、シンガポールの電子司法化(?)はすさま じいものがある(日本は完全に後進国になってしまった!、か?)と感じました(Broad Band通信インフラの整備とそのための自由化・利権撤廃が急務だと思います。)。 Lau氏のお話の中で、e@drという本格的なOnLine Mediationが2〜3ヶ月前に正式にスタートしたとのことでした。WebSiteは http://www.e-adr.org.sg./ です。今後、その実際の運用と成果に期待したいと思います。


2000年10月21日、22日と箱根で小島武司教授のゼミ合宿(会社法務及び民訴)が行われ、参加してきました。例年のとおり、弁護士や法務担当者などのOBも参加し、模擬裁判やSmallセミナーで活発な議論が行われました。


2000年10月14日土曜日に岡山仲裁センターでシンポジウム「ADRの可能性−岡山仲裁センターの挑戦」が行われました。当事者を主体とした同席での話合いによる紛争解決を目指し、明確な理念と技法をもって挑戦を続ける岡山仲裁センターに感動しました。


2000年8月28日〜29日に法社会学会関西支部の合宿が行われ、参加してきました。


2000年7月8日〜9日に第二東京弁護士会仲裁センターの合宿が箱根で行われました。仲裁における理念と実践について、豊富な経験に裏打ちされた貴重な報告とディスカッションが行われました。原後弁護士の提唱される「弥二嘉多仲裁道中」は卓越したアイディアだと思います。旗揚げされたら参加させていただきたいと思います。また、この合宿には弁護士職だけでなく、ADRに携わりあるいは研究をしておられる方々も参加され、活発で示唆に富んだ討論が行われました。


2000年5月20日、民訴法学会が同志社大学で行われました。岡山大学の山田文先生が「調停における私的自治の理念と調停者の役割」というテーマで報告をされました。とても有益で興味深いご報告でした。


ニューヨークでMediation(一応「調停」と訳します)の実践をしておられるレビン小林久子氏の『調停者ハンドブック 調停の理念と技法』(信山社)が1998年3月に刊行されました。私は、同書の栞に「衝撃の同席調停」という一文を寄せる機会を与えられました。私の受けた衝撃を告白したものです。紛争解決における調停者の役割や技法について、理念と具体的なプラクティスの在り方を分かり易く説かれた、とても示唆に富む素晴らしい本です。皆様に是非ご一読をお勧めしたいと思います。


 「衝撃の同席調停」に書きましたように私は、井垣康弘判事を中心とした大阪の研究会に参加しております。この研究会での私のレジュメなどを掲載させていただきます。

 また、この研究会についての新潟大学・水谷暢教授のWebサイトを是非ご訪問ください。水谷教授のSiteでは同席での話合いのロ−ルプレイを動画と音声で見ることができます!


 1999年11月にはレビンさんのご案内で米国にゆき、ニューヨークのMediationの実情などを勉強させていただき、大きな収穫を得ました。


レビンさんはこれまでも日本で各地の弁護士会等でMediationのセミナーをされました。また、大阪の研究会にも毎年参加して下さいます。今年(2000年)3月にも、第二東京弁護士会の仲裁センター10周年記念行事で講演をされ、その翌週には大阪の研究会にも参加されました。多数の実務家や研究者、大学生等をまじえて、活発な議論が交わされました。

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