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レビンさんの『調停者ハンドブック 調停の理念と技法』によせて(巻末の栞、1998年)       弁護士大澤恒夫

衝撃の「同席調停」

 私は、法的交渉の実践と若干の研究 (小島・加藤編著『民事実務読本W』3頁以下及び17頁以下)の延長線上の縁に導かれて、97年夏に立教大学で行われた「調停の技」シンポジウムに出席させていただき、そこで井垣康弘判事が主催しておられる大阪家事調停改革実務研究会を知った。まったくお恥ずかしい話であるが、私はそれまで「同席調停」を知らず、「交互方式」を当然のプラクティスとして受け入れてきた。しかし、シンポジウムで「交互方式はグローバルスタンダードに達しない不公正な手続」であると喝破され、クラクラと目眩のする感覚に襲われた。以来、<当事者を主体とした同席コミュニケーション><公正で透明な手続き><当事者にとって納得の行く解決>といったキーワードが頭のなかをグルグルと駆けめぐった。私は大阪の研究会に「是が非でも掴み取るべきもの」があると直観し、その年の9月、押しかけ女房のようにして参加させてもらい、以来毎月大阪に足を運ぶようになった。研究会ではレビンさんを講師としたセミナーが行われ、紛争当事者を真の意味で主体とした同席コミュニケーションによる解決プロセスと調停者の役割や具体的な技法について、米国での実践に基づく講義、参加者によるロール・プレイ、ディスカッションが行われた。米国では、相当の時間を使って専門的教育を受けた調停者適切な技法のもとに調停を進め、幅広い紛争分野当事者の満足度の高い解決迅速かつ効率的に行われているという。これは「衝撃の真実」であり、私ども紛争解決制度の運用者は、もはや座して旧習に盲従することは許されないはずである。レビンさんの「問題の書」から大いにショックを受けながら、日本でのあるべき紛争解決制度とその運用の改革について考えて行きたい。


 同席調停の議論は、調停の運営だけの議論ではなく、司法制度論、法律家論(職域論や教育論を含む)、紛争解決過程論、紛争予防論、法的交渉論,等々の観点で大変なインパクトを及ぼすものです(実務家の中からプラクティス変革の具体的提言と実践という形で現れている点が、これまでの議論と顕著に異なる点だと思います。)。わたしども「法律実務家」の足元に爆弾が仕掛けられたともいえるほどの緊張感を私は感じています。私としてはこれを自分の実務に密接な分野(予防法務、裁判外紛争処理、合意形成型倒産処理など)を考慮して、より広いパースペクティブから「同席コミュニケーションによる合意形成と法律業務」というテーマ設定でアプローチしているわけです。


私はこれ以来、大阪の研究会(「対話促進による紛争解決研究会」)に出席し、勉強をしております。


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