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2003/02/23 第1回対話シンポジウム@大阪大学

このシンポジウムは、大阪大学21世紀COEプログラム及び科学技術政策提言のプロジェクトの一環として行われたもので、午前の部で被害者加害者調停のロールプレイ及びそれに関する議論が行われた後、午後の部では、社会のあらゆる場で行われるべき対話の場の構築と運営の問題について、さまざまな仕事や学問の分野から多角的な研究報告がなされ、議論が行われました。私も恥ずかしながら(^^ゞ、午後のシンポジストとして参加しました(以下は当日の私のメモです)。

午前:修復的司法を実施するNPOの設立を考える関西の会による「被害者・加害者調停」(VOM)のRole-Play 

 少年がバイクに乗って女性を背後から襲い、バッグの引ったくりをし、その際女性に重症を負わせた事案について、加害少年・その母親と被害女性・その夫との間で、加害少年の申し立てに基づき、MediatorのINTAKEにより対話の場が構築され、被害者加害者調停が行われるという設定。加害少年の少年審判での付添人(弁護士)も同席している。 

 Mediator:VOMとは:当事者同士が事実の重みに向き合う

       当事者及び社会の修復、厳罰傾向、賠償問題、当事者の葛藤、

       一人の人として

       周到な準備と聴く行為

       In-Take

       当事者の主体性、双方の自発性と選択の自由

       MによるEmpower、コミュニケーションの促進

       調停との違い〜対話中心、

       期待される効果

M=Mediator、V=被害者(Victim)、V夫=被害者の夫、O=加害少年(Offender)、O母=加害者の母、弁護=少年審判時の付添人

ナレーション:事件の概要とVOMまでの経過

M:自己紹介、VOMの趣旨説明、経過報告、基本的姿勢〜話を聴き、率直に応え、事実に向き合う、主体は当事者、Mは応援、Openな態度

V:事件そのものの恐怖、その後の精神状況、家庭での問題〜夫と子供〜崩壊の危機、

V夫:家族を元に戻して欲しい、家族の怒り、弁護士もついて少年院6ヶ月で済むのか

O:謝罪、事件の背景、責任取りたい

O母:親の責任、謝罪、償いをしたい。

V:どうやって責任を取るのか(このあたりから当事者同士の会話)

O:謝罪

V:ばばあ、殺すぞといわれた恐怖が分かるか!

O:記憶にない、謝罪

V:20万円の現金を盗られた被害と意味

O:謝罪

V:ずっと狙っていたのか

O:偶然だった

V:仕返しの恐怖

O:絶対にしない、反省/謝罪

V:バッグは?捨てたのでは?

O:彼女にやった。捨てたといったのは嘘。

V:あれは思い出のバッグ。返して欲しい。

O:大事なものとは知らなかった。彼女が持っているか分からない。確認する。

V夫:何回もやっていたのか。

O:先輩から金を持ってくるように言われて、困って引っ手繰り。自分でも金が欲しくて、5回くらいやった。

V夫:理由になるのか。他の人にも謝ったのか?

O:やっていない。被害者がどこの人かも分からない。

V夫:とった金はどうしたのか?

O:自分で使ったものもある。遊び。

M:その頃は働いてなかったの?

O:していなかった。

M:そのころのVの様子は?

O母:O中2のとき離婚。高校2年で中退、悪い仲間との付き合い。外泊。体の悪い弟に掛かりきり。私が監督せず申し訳ない。

M:お母さんはそういっているが、どうか?

O:悪いのは自分。高校の頃、うるさく言われうっとうしかった。ババアとか言うようになって、家を出た。悪い仲間とつるんで、退学。母はずっと心配してくれた。少年院にも着てくれた。母が謝ってくれた。これから真面目に働き家族を支えたい。

O母:少年院に入って変わった。

V夫:そちらは良くても、こちらはほったらかし。なぜ連絡の一つもなかったのか。

O母:どうしてよいか分からなかった。給料も安く、20万とって怪我をさせて、とても賠償できず怖かった。きょうVの苦しみがわかった。謝罪。

V夫:賠償など後の話。謝罪の一言も何故しなかった?弁護士までついていて何故連絡をしなかったのか?

弁護士:苦しみがよく分かった。記録上のことだけしか分からなかった。Vに謝罪をしたいと思ったが、審判段階では母もパニック状態で難しかった。一日延ばしで・・・少年院に言ってからは落ちつたが、仮退院後に先延ばしをした・・・申し訳ない。

O母:悪いのは私。

V夫:警察でも何も教えてくれない、裁判所でも何やってるのか。なぜ誰も助けてくれないのか。Vの気持ちがわかるのか?

弁護士:苦しい思いをされたこと、謝罪。少年法改正で記録閲覧、意見陳述、決定理由の開示が可能になったが、裁判所が権利告知をしない。気配りをしないことを知っていたが、弁護士の方から知らせるべきだったと後悔。

V夫:仮にそういうことを頼んでいたらどうなったのか?

弁護士:プライバシーの問題もあるが、基本的には応えられると思う。←倫理上の問題?

V:どうして半年で出てこられるのか?

弁護士:本件は悪質で成人同様に刑罰ということも議論はあったが、内心の検査結果等で本来的に粗暴ではないとして、短期少年院処遇になった。3点を考慮。@非行進度は浅い、A本人の気付きと反省、B母子関係の修復の方向⇒母の監督の可能性。少年院での改善教育で再犯防止可能との結論だった。弁護士もアフターケアをせよと言われ、ボランティア的にやっている。

V:O自身はどう思っているのか

O:気持ちの深い部分を語る。気付き。謝罪

V:少年院で何を考えたのか。本当に反省したのか。

O:集団活動や作業で気持ちが変化。先輩の脅しなど関係ないことが分かった。自分にけじめをつけるためにもVOMをお願いした。本当はVに会うのが怖かった。反省が足りなかったのが分かった。多くの人がこんなに辛い思いをしていたことが分かった。許してもらえないかもしれないができるだけの償いをしたい。

V:どうやって償いをしてくれるのか?

O:回転すしのアルバイトで4万くらいの給料をもらっている。これからは他の仕事を探して10万くらい稼ぎたい。

V:口先だけではないか

O:必ず働く。保護司に頼んで探している。ガソリンスタンドをお願いしている。

V:信じてよいのか。

V夫:金で解決が付くもんではない。そういうことをしたことを覚えておいて欲しい。そういう気持ちでやるというのであれば、話をしよう。母親はどういう責任をとってくれるのか。

O母:監督する。きょうは少ないが10万円を持参。食費等を削ってためたもの。自分の給料は少なくて、その中からは出せない。

V:Oの給料全額など払えないのでは。

O母:監督するが、弟が入院したら・・・

V:きちんとする誠意を示して欲しい。根こそぎ金を寄越せとは言っていない。

V夫:今日の金は受け取る。この先のことは相談しよう。きちんと働いた金で賠償して欲しい。

弁護士:保護司が頼んでくれているGSでフルタイムで働ける見込み。20歳まで監督。きちんとできると思う。

V夫:今日で最後か?

M:そんなことはない。

V夫:仕事が決まってからもう一度話し合いをやろう。

M:今日の話の確認。

補助者:@バッグの件〜弁護士経由で送付返還、A今月分給与による支払い〜弁護士経由で、B来月以降のことは次回に話し合う。

M:次回の日時。4月半ば。4月12日土曜夕方5時。

弁護士:よろしければ次回に保護司も同席してもらってよいか。

VM:OK

M:Oに対する説示、全員への謝辞

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VOMに関するDiscussion(会場からの意見と出演者の感想)

1 A弁護士:こんなに上手くは行かないのではないか。主役は被害者の立ち直りなのか、加害者の立ち直りなのか、不明。加害者のためのものとして傾きすぎていたように見えた。

2 B弁護士:被害者の感情が出すぎていた。Mがもう少し押しとどめても良いのでは?対話になっていない。相互に言い放し。Mが介入すべきでは?←INTAKE段階でのMの役割が大きいのでは?

3 C弁護士:被害者側での心情吐露はある。謝罪もある。こういうことで対話が始まる。こういうプロセスも必要では。弁護士の保護的メンタリティからすると、一般的には加害者を出さないのでは。Mが弁護士まで出席を許したのはなぜ?

4 D研究者:もうちょっと沢山の人が参加しても良いのでは?なぜ弁護士が参加したのか。場のバランスが崩れるのでは。短期処遇の説明ではなく、感情のぶつかり合いが必要では。怒鳴りあい、泣き出しの方がふさわしい。

5 E研究者:対話が成り立ちすぎていて、Mの介入がなかった。実際はもっと介入が必要になるのでは?どういう介入の仕方があるのか?進行の仕方についての意見を求めたが、意見が出なかった。どんなことがありうるか?

6 F:最後のまとめが実際的なことに限られていて変だった。

7 G看護士:加害者被害者がはっきりしている構図だったが、家族間の葛藤・やりとりがでてきてもよいのでは。関係者が参加しているが、離婚した父は?その他の関係者は?それらが参加していないことの意味は?という検討も必要では?

8 H医学系出版社:前提で違和感。賠償等の問題が本日始めて出てきたが、予め何らかのコンセンサスがないと対話にならないのでは? 精神的対話なのか、金銭的問題解決のための対話なのか、それが予め分からないと対話の場に付かないのでは?

9 I:加害者側の申し出というが、なぜそうなったのかが分からない。弁護士がしゃべりすぎ、説明的過ぎる。それをVが黙って聞いているのも不自然。

10Jマスコミ:最後は賠償の問題になって、いまの裁判と同じなのでは?

11Kマスコミ:@被害者側が誰からも手を差し伸べてもらえなかったのが、VOMに一直線に繋がっている。被害者の権利がキーワードではないか? A精神科のケアを受けているケースがVOMの適用に適するのか?

12L:対話の仲介の勉強をしたい。どういうことを考えてやるべきか。Mの理念と技法を知りたい。

13M臨床心理:加害者の罪悪感で率直に対応しているが、そのような対応ができない加害者の場合は? 被害者や加害者への期日間のケアはどうすべきか?(怒りすぎ、謝りすぎの場合に心理的ケアを要する場合がある)

14N警察事務職(少年課):場所のセッティングをどうすべきか? 逆送は0.数パーセントで、かなり特異なケースと思うが・・・

(出演者)

ナレーター:VictimSupport 被害者支援が必要。それが対話成立の条件ではあるが、それを待っていてはできない。Just Do It!その上で基盤整備が必要。

補助者:第1回目の話し合いはこんなものでは?2回以後が中心的か?

V夫:付添い人しゃべりすぎは確か。もし出席するなら、助言役参加が許されれば出席するが、加害者のしゃべりを引き出す役割。被害者側にも弁護士か援助者が必要では。

V:被害者が話を聞いてもらって回復できるか?気持ちを聞いて貰えて、少し良かったかと思った。Mが頷いていたのは、聴いてもらえていると感じた。感情的なもの〜INTAKE段階でのガス抜きあり。公の場での押さえがある。質問や答え如何によっては、かちんとくるし(弁護士がボランティア・・・と言ったとき)、納得もする(同じ母としての言葉など)。ちょっとして言葉。本当の回復は絵をかけるようになること。少年の頑張りが自分の頑張りになる可能性。しかし、もし裏切られたら落胆は大きい。

M:グループカウンセリングのFacilitatorをしていた。Mは弱かったと思うが、中立性、当事者の主体性の尊重からしたら、黒子に徹するべき、さぎげないほうが良い。大岡裁判の裁きは違和感がある。INTAKEで8〜9割が進んでおり、アセスをしたうえで場を設定している。この場の安全を確保するのが今日のMの役割。場の雰囲気を読むのが役割。

O:不登校生徒のフリースクールスタッフ。17歳の子供がこの場でやっていくのは難しいのでは?このOはかなりの人物。強制教育の成果か。しかし疑問を持っている。

O母:メディア:被害者取材が多い。加害者の気持ちは分からない。RPでも心が動く。

こんな上手く行くはずがないというのも事実だろうが、ともかくやることには価値があるのでは。気持ちのぶつけ合いが良いのでは。

付添人:加害少年たちは謝罪したい気持ちを持っているが、その場がない。VOMは貴重な場できちんと話し合いができる。皆が利用するようになるのでは。

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午後:鷲田大阪大学文学部教授:臨床哲学、出会い、「臨床と対話」チーム+「臨床コミュニケーションのモデル開発と実践」

集団・集団、機構と機構、個人と〜個人と個人等々の軋轢衝突の、交渉・裁判等での解決の試み

種々の要因による複雑化〜Eg.科学技術の進展〜環境汚染、遺伝子治療〜理解に専門知識を要する⇒市民による理解の困難性⇒医師と患者の関係〜患者への対話、それぞれの文化の間のディス・コミュニケーション、発電所やゴミ処理場などの設置をめぐる対立、食品安全の問題、生徒と教師、年寄りと家族、異なるコミュニケーション圏における軋轢の増加

@公共的意思決定に至るコミュニケーション過程の検討、専門家と一般市民を繋ぐ⇒政策決定への参加、Aケアのコミュニケーションのあり方、⇒双方向的コミュニケーションの場を開く方式を考える。Mediatorの育成

上野NPOCP関西理事長:NPO型ADRとは何か?〜民間型・・・うつわの運営の課題が山積=対話促進業化の危険性、民間で対話の場が作れるか?〜反応はあるが取り込み口が如何に困難かどろどろしたもののINTAKEの難しさ〜どろどろをきれいにして取り出す/もっときれいにすることの難しさ

担い手:Mediatorのことは言及されるが、場作りに重要なのは管理者・Administrator

二人を引き合わせるまでに、ほとんど決まっている。司法型・行政型は引きずり出されたという感覚←他動的な権威付けでなく、みずからの意思で参加するもの

相手の顔に自分の顔が映ってくるのが対話、そういう状況を作ってゆくのが重要

専門職が色々な役割で貢献的にかかわってゆく方式をとっている。

技法の開発

稲葉科学技術文明研究所特別研究員:科学技術問題における対話モデルの構築

 科学者からの一方的な情報提供と市民による一方的受容 ⇒ ディスコミュニケーション ⇒Risk Communication〜双方的コミュニケーションによる回復を目指す

来たくない人・関心のない人とのコミュニケーションの場をどうセットするか?

Mediation:合意形成そのものは不可欠とは考えない。

多数対多数のMediation

多様な第三者の必要性 @場の運営者、A判断サポート、B当事者のサポート

Eg廃棄物処理上の問題をめぐる教育実践の開始

前野関西学院法学部大教授:VOMの可能性

 司法的解決よりも優れたものとしてのVOM

 理念上の問題〜加害者の人権と被害者の権利とを対立的に見る風潮〜本当は対立的ではないはず、被害者への配慮を深めることは加害者更生に資する

 具体的被害者への責任が出発点として重要

 応報的重罰主義の否定(VOMが適用されるべきケースでは)←全てのケースについてVOMが可能とは考えていない。

 運営〜@完全な任意性、A訓練されたボランティア  効果〜VOMによる更生への効果ありとされている。NZではVOMが法制化されているが、世界的にも例外。

田中日本消費生活アドバイザー協会研究員:電子商取引ON-LINE紛争解決

相談=当事者にとっての解決は何だろう〜Mediationへの出会い

司法制度改革審議会最終意見書〜しかし、中身がはっきりしない。

裁判はラストパラダイスか?否

トラブル〜相談〜個人の問題の解決  Cf. Disputeは相手がある

解決とは何か

問題背景の変遷〜各自の背景による思い込みで決めてはいけない

自己責任・自律の時代と対話の必要性

説得から納得へ

Case1:インターネットオークションの事例〜瑕疵問題

Case2:自分との対話〜多重債務問題〜破産で解決するか、そうではなく自分との解決による再発防止が重要では?

消費者問題いおける対話のキーワード

 ⇒信頼〜信頼が崩れている関係で第三者が関与すると、より崩れる〜信頼の置ける機関

 ⇒聴く力と話す力

対話の実効性〜対話訓練前後で対話への意欲が強化

力の不均衡の是正:パラ・レゾリューション〜並行した助力による力の均衡

パラレゾリューションとメディエーションの連携、相談と分離

金子:「みすずわたしと小鳥とすずと」

和田九州大学法学部教授:紛争処理のケアモデル

コミュニケーション圏=これまで専門世界内部の不可視性で尊敬を買っていたが、圏は崩れてきている〜アンタッチャブルな世界が許されなくなってきた。Eg医療:医療システムにおけるコミュニケーションギャップ

問題の解決の意味が変わってくる。判決や調停成立、治癒、が解決になるか?より幅の広い解決が必要〜対話の必要〜対話そのものが重要、コミュニケーションの回復による生活の再構成

その場での存在、所作にも対話の要素がある。

相互の理解を埋めるということではないのでは?〜受け止める人のコンテクストが異なる場合、分かりやすく説明しても、解決にならない。共感的な受け止めが必要。

今朝の対話の中での「支払う」というのは、実は金銭問題ではなかったのではないか。

対話とは何か〜「ケア」=主体に寄り添い自己実現を助けること。

Mediator=両当事者がいてのケアの難しさ。ルールに基づいているだけでは信頼されない。

等距離だけでもダメ。⇒技法は難しいが、実践の中から生れる。Just Do It!

九州大学紛争管理研究センター=レビンさん

 〜来年度拡大=医療におけるMediationの在り方

 〜法科大学院での教育

 〜クリニックでのMediationの実践

渥美大阪大学文学部助教授:グループダイナミックス〜ボランティア活動の現場より

 日本クループダイナミックス学会〜集団の雰囲気、動物も含めて、

社会構成主義〜自分も参加者、協同的実践  槍投げの選手に45度で投げろといってもダメ、真上に投げろといえば通じる。

ボランティア研究 

@なぜ活動をするのか(動機を探るのはどういう構成か)

 心理学的アプローチ(体の中に内蔵している)、ではなく、社会構成主義によるアプローチ(状況の中でつじつまを合わせる物語)

A体験を語れるか(語りえない体験)

語り/対話研究

Dominant Story

連立方程式の比ゆ~解けないときに式の樹立を手伝う

展望

協同の物語の創出

ストーリーの開発に寄り添う

対話方式の開発

無条件のCO-Presence

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